東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)が公表されました2016年04月09日 08:26

東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)

お断り:以下の文章は、社会資本の今後の整備に関する国の考え方について書かれた文書について、その解釈および私見を、著者自身の社会人経験のみを拠り所とし酩酊状態で記述したものです。本文章の記述に関して一切著者は責任を負いません。解釈と深読みは各自工夫のこと。

7日に、これからの東京圏の鉄道ネットワーク整備の基本方針を検討する国土交通省の小委員会が開催され、その中で東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)と言う答申案が決まりました。
この案については、14日まで実施中のパブリックコメントを経て、正式な「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申として決定されます。

以前も何度かブログで、現在の「運輸政策審議会答申第18号」に代わる新しい首都圏の鉄道計画の基本的考え方が決まりつつある話を書いてきましたが、いよいよこれも大詰めです。
ご意見のある方は、「ぼくのかんがえたさいこうのしゅとけんのてつどう」をコスパ良く現実に反映させる最高のチャンスですので、日本語でパブコメを書いてレッツ投稿!

閑話休題、この答申を待っていた人の多くが「どこの路線がどの順序で整備されるのか」と言うことを一番気にするところですが、残念ながら、答申案のうち前半3分の1は「字ばっかり」です。
具体的には、「東京圏の現状と将来動向」「東京圏における今後の都市鉄道のあり方」で20ページくらい求められるものと現況分析が続き、マニア的に旨味のある具体的なプロジェクトの検討結果は後半に出てきます。
マニア的姿勢で望むと、おそらく後半までたどり着けず途中で断念する。と言うケースも多くなりそうな構成です。一応書く立場では「これだけ順に読んでいけば、背景から結論まで順序よく読める」構成になってはいるのですが。

まず第1章「東京圏の現在と将来動向」では、「これからの社会資本整備は少ない費用で最大限の効果が発揮されるよう、既存ストックの有効活用を図りながら、選択と集中を徹底しつつ計画的に推進(p2)が求められており。東京圏の都市鉄道の充実ぶりが整理されています。その上で、対応の必要性が象愛している事柄として「駅空間の質の向上(p8)」「遅延対策(p8)」「災害対策(p8)」の3テーマが挙げられているとともに、鉄道輸送需要の将来動向が定量的な分析(2030年時点の東京圏夜間人口は2010年比で136万人減(p9)だが、平均混雑率の目標達成は困難(p10)と推計)が行われています。

その上で、東京圏の都市鉄道が目指すべき姿として「(1)国際競争力の強化に資する都市鉄道」他6項目のあるべき姿が提示されています。今回の答申案では、個別の路線ごとに整備すべき優先順位は記載されていませんが、逆にいえば、今までの答申ではあまり目立たなかった「国際競争力の強化に資する」が一番に出てきて、これに紐付いたテーマが「特に優先すべき案件」として言外に言っている(昨日今日の報道のされ方を見てもそのような解釈が浸透しつつある)ように思われます。はっきり書かれているわけではないですが、答申案の作り方から、自分はそう読みました。

それに続いて、地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクトとして複数の路線が挙げられていますが、こちらは人口の増加による成長余地が正直見込みにくい中、どうこの先生きのこるかまで含んだ展開になりそうです。

その上で(1)国際競争力の強化に資する8プロジェクト(上記によりこちらが優先されそう)が挙げられています。これらも優先順位ではなく、実施にあたってのメリットや課題が個別に触れられていますが、自分はここで挙げられた課題が「重箱の隅突き(事業性とか検討熟度みたいな抽象的な言葉でなく)個別事項をいっぱい出している)」になっているほど、実現に近い計画と読みました。

(1)都心直結線(押上〜新東京〜泉岳寺)
(2)羽田空港アクセス線(りんかい線・田町〜東京貨物ターミナル〜羽田空港、京葉線〜りんかい線相互直通運転
(3)新空港線(矢口渡〜蒲田〜京急蒲田〜大鳥居、いわゆる「蒲蒲線」)
(4)京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引き上げ線の新設(羽田空港線改良)
(5)常磐新線の延伸(秋葉原〜東京(新東京))
(6)都心部・臨海地域地下鉄構想の親切及び同構想と常磐新線延伸の一体整備(臨海部〜銀座〜東京)
(7)東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲〜住吉)
(8)都心部・品川地下鉄構想(白金高輪〜品川)

また、駅空間の質的進化に関するプロジェクトとして「広域的な交通ネットワークの拠点のとなる駅」「国際競争力の向上が求められる地域の拠点ととして8駅があげられています。今回答申案では、路線の整備はある程度進捗しているのに対し、路線と路線を結ぶ「駅」により多くの改善余地があるように挙げられています。

(1)成田空港駅・空港第2ビル駅
(2)品川駅
(3)浜松町駅
(4)大宮駅
(5)新横浜駅
(6)橋本駅
(7)新宿駅
(8)横浜駅

数十年先の首都圏の公共交通機関の姿を想像する有力な手がかりになりそうですので、余力があったら、もう少し本答申案を読み込んでみたいと思っています。

【参考文献】 ホーム>政策・仕事>第20回 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会 配付資料(国土交通省) 「羽田アクセス線」「蒲蒲線」は、実現するのか(東洋経済オンライン・小佐野景寿)