世界最強鉄道会社への道2012年02月25日 00:23

2/25一部加筆修正

「杉山淳一の時事日想:JR東日本は三陸から“名誉ある撤退”を」を読んでの感想です。暴走気味で感想になってないかもしれません。


瓦礫輸送の可能性

JR東日本が、先だっての震災で大きな被害を受けた三陸地方の鉄道路線復旧に対する問題(いわゆる「専用道とセットでのバス転換化」)について論じられています。

杉山氏のこの提案が目新しいと思ったのが、「瓦礫搬出での鉄道の活用 」の提案です。三陸地方での鉄道維持にあたりこの機能を重視し、貨物輸送目的での鉄道路線復旧を行う、貨物鉄道会社も鉄道路線復旧のステークホルダーに入ってもらう、というものです。

視線としては目新しいのですが、瓦礫はいずれ片づいてしまうものですし、多くの道県では今なお瓦礫受け入れの体制が整っていません。また、沿岸部から沿岸部への瓦礫輸送ですので、鉄道より輸送力のある船舶を使う方法も有用ですので、個人的には少し難しいのではないかと思います。

BRTの有効性

2ちゃんの鉄道総合板を見てて「BLT」という誤字カキコと「そりゃベーコンレタストマトサンドだろ」というツッコミに吹いたのですが、BRT。
訳すと、「バス・ラピッド・トランジット」=バスによる高速輸送機関という意味です。通常の路線バスに対し専用軌道の確保・車両の大型化により、バスより高い速度・輸送力を保つものです。
日本では、茨城県・鹿島鉄道廃線跡のバス専用道路整備によるBRT化が有名ですね。あとはBRTという言葉が出る前から似たような高水準バスサービスで成功しているのが「名古屋市内の基幹バス」「つくば科学万博(1985)の連接バスエキスポシャトル」「JRバス白棚線」が挙げられます。

個人的には、輸送機関の復旧整備という面に限って言えば、このBRTは非常に有用だと考えています。
これから被災地は高台移転や原位置復旧などが混じり、市街地復旧は従来の形で復旧するとは限らず、長い期間にわたり人々の動線は一定に落ち着かない事が想定されます。
そのような変動・変化を繰り返しつつ復旧するであろう被災地に対し、鉄道は追従するには「大きすぎる」と考えられます。デリケートなところはもっと細かく地元市街地の復旧・復興に追従できる交通機関の方が良い。
そうなると部分的に専用インフラを持ち、それ以外では復旧・復興する市街地に細かく追従できるBRTが俄然有利であると考えています。

理屈では説明できない

ただ、個人的には、鉄道復旧、それも震災前と同様のJR東日本の路線としての復旧を願っています。

非科学的なものしかありませんが、理由はあります。
第一に、地元にとって震災で失われたものが復旧されない事が「見捨てられた」といった類の大きなストレスになる事が予想される事。
第二に、BRTといいつつも現物はバスであり、現に廃止された鉄道路線の代替バスですら利用者減により廃止されるリスクに晒され易いこと(関東圏では、旧筑波鉄道の真壁〜岩瀬間とかで前例があります)あろう事。
第三に、バスとは異なり、鉄道の場合は路線の敷設・撤去が行いにくいことが逆に作用し、物理的・心理的に地域間を結ぶネットワークとして機能し得ること(このあたりの心理的効果を評価した、心理学or社会学or土木工学の学術論文を読んでみたいところです。)
そして最後に、いちJR東日本ファンとして、このような震災ですら揺るがない自社ネットワークを誇示してほしいと思っていることがあります。最初にリンクした同文で書かれている復興への枠組みに対する行政へのジャブ的な面もあるかもしれないですが、そんな小さいことに拘らず、もっと言えば合理性で説明できないこの問題が解決出来れば、文句無しに世界最高・最強の鉄道会社としての地位を全世界に誇示できるではないですか。
どうでしょJR東日本さん。「世界最強鉄道会社の本気」、合理性採算度外視の「漢気」を是非見てみたいものです。

コメント

_ NAL ― 2012年02月27日 01:44

 私自身は、鹿島鉄道廃線後の状況を鑑みて、「安易なBRT転換は危険」だと考えています。

 BRTの場合、定時運行性と速達性を確保するために専用道を整備する必要があるわけですが、この専用道と関連インフラの整備に思った以上にコストがかかってしまいます。
 鹿島鉄道を鉄道として近代化して存続させる場合に必要なコストは11億円とされていたのですが、バス専用道や関連インフラの整備などで、結局トータルで大差ないコストを要しているのではないかと思います。
 バス転換後、鉄道時代の利用者数の3~4割に乗客が減った(6~7割の減少)という結果が明らかになっていて、いくら単体ではバスの方が運行コストや維持コストが割安であっても、利用者数だけでなく、鉄道ではなくなることによる社会的便益の損失は計り知れないものがある……というわけです。

 ご指摘の「路線の敷設・撤去が行いにくいこと」というのは、言い換えれば「将来確実性」と表現できます。
 このことは極めて重要なことで、将来も安定的に公共交通が確保されていると分かるからこそ、その地域に住もう(住み続けよう)とか進出しよう(進出し続けよう)という判断材料になり、だからこそ地価も上がるといえます。

 今回のケースは、大災害からの復興という難しい状況の中での話ではありますが、上下分離方式の積極導入により、むしろ国がインフラ整備と維持を肩代わりするから、JR東日本には運行だけに専念してもらうような枠組みが必要になるのではないかと思います。
 あるいは、鉄道としての復活が難しいという場合でも、あえて軌道(LRT)として整備することにして(ゲージと車体断面はJR在来線と同じにしておく)、コストを抑制するという考え方もあります。

 特区制度を活用したり、必要な法整備を進めたりと、やりようはいくらでもあるはずですから、ぜひ柔軟な解決方法に話がまとまることに期待しているところです。

_ 読者 ― 2012年02月27日 14:25

いつも拝見しております。私は東北の被災ローカル線は全て廃止すべきと思います。既に震災前より地元の方が見捨てていたからこそ赤字になっていたのではないですか? 地震で被害を受けたから見捨てられたという精神的ストレス解消のためにも鉄道復活というのはあまりにおかしなご意見と思われます。被災自体は大変なことではあるけれど、だからと言ってなんでも言うなりにすべきことではないでしょう。それまできちんと維持したり利用してこなかった地元に今更鉄道を要求する資格はありません。
また被災地だから何でも許されるという論拠も本来、おかしなことなのです。被災地であっても駄目なものは駄目という観点がわざと外されている世間の論調も疑問です。
もともと鉄道の利用をしてこず赤字にしていた地域なんですから、バスで十分です。

_ クロポ415@泥酔鉄道 ― 2012年03月03日 22:16

NALさん、読者さんコメントありがとうございます。
コメントへのリプライに時間がかかった事はご容赦ください。

>NALさん
コメントされております内容はすごく同意です。鉄道が存続し続けることのメリットが、感情論でなく理系的・土木計画的な定量的評価を経て証明されれば、その必要性が誰の目にも明らかになるのではないかと思います。
ただ、その評価する方法が今なお世の中で確立していないため、自分の目で見て、(以前の水準には至らないかもしれませんが)理詰めで行くならBRT、理屈関係無しの最善解はJR東日本単体での鉄道路線復旧だと思っております。

>読者さん
私も、鉄道路線が廃止されかけ、幹線バス路線が現に廃止された地方に住んでいた人間として、読者さんのような感情を抱いたことがあります。
しかし、鉄道のメリット・デメリット(輸送力・輸送効率はプラス、小回りは効かない)があり、さらにそれが低いレベルで均衡が取れているバス・乗合タクシーがあるように思えます。地元住民の自己責任・因果応報はともかく、そのあたりの均衡を考えておかないと、結局「交通機関を用意するのは自己責任(今でいうなら自分所有の自動車)」という結論に至ってしまうように思います。
将来、今のように自分所有の自動車を維持し続けられるかは私は疑問を持っています。また、その際に「自己責任論」を押し付けることはしたくないと思っております。
一般化しすぎて要領を得ないレスポンスコメントになってしまいましたが、如何でしょうか。

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