北東北"鈍行"読書紀行(読んだ本の紹介)2011年05月08日 06:56

北東北"鈍行"読書紀行:車内で読んだ本
読んだ本

(左上)「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎夏海(ダイヤモンド社)

昨年、移植の経済書として大ブームを巻き起こした「もしドラ」。もしドラブームはまだ続いています(アニメ・映画等のメディアミックスも進んでいる)
2次元の異性にすら気後れする重度の異性恐怖症(マテ)があり今まで手を出しにくかったのですが、折角の機会ですので、今回買って読んでみました。

部活動のマネージャーというと「世話する人」ですが、そのマネージャーが文字通り「管理職」として活躍し、公立高校の野球部を成長させてゆく話です。
話自体は荒唐無碍な作り話ながら、ドラッガーの「マネジメント」を読み解く過程が分かりやすく書かれており、小説としてもビジネス書としても読む価値があります。
で、読んだ後。ドラッカーの「マネジメント」を

真摯に

実行できるか?それはマネージャー・管理職に限らずどんな立場であろうとも。それがすごい気になりました。
特に、我々の社会は「座学の実践」という点では発展途上であり、本書では強くそれを問われている気がしてなりません。

(右上)「秋葉原事件〜加藤智大の軌跡」中島岳志(朝日新聞出版)

次に手にしたのが、2008年に発生した秋葉原連続殺傷事件。その犯人の事件前の、生い立ちから事件直近に至るまでのルポルタージュ。著書の『是非、先を急がず、ゆっくりと彼の人生と向き合ってほしい。少しづつ立ち止まりながら、読んでほしい(プロローグ・17ページ)』に反して、1時間ほどで読み切ってしまいました。環境を変えて気になったところ中心で読み直してんでみたいと考えています。

この本の帯やエピローグ部分で記述される『過剰なにむち打つように「自己責任」を強いる社会とは何なのか』といった社会に対する疑問は、この本を読んだ限り、は感じることはできませんでした。
しかしながら、本書を読んでいて最も引っかかったのは、『言葉、言葉、言葉(エピローグ)』にもあるような、人と人とのコミュニケーションの問題です。成長過程でコミュニケーションに恵まれなかった加藤の不幸は、せっかく手に入れた「居場所」を、様々な理由で手放してしまった事だと思います。
加藤は職や居所を転々としながらも、「コミュニケーション不全」ではなかったように思います。本書が「自己責任論」へと「飛躍」しているのも、単純に出版元の趣味でなく、本書で記述される加藤の「さまよい」を追ってその答えの1つとして出てくるように思えます。
自分も、仕事の都合で、転々とする人間ですが、ほかの人と「言葉」でうまく関われるのか、強く不安になりました。かなり「言葉」を不得手とする人間ですので。。。

(右下)「無縁社会〜無縁死三万二千人の衝撃」NHK「無縁社会プロジェクト」取材班(文芸春秋)

『そもそも、”無縁社会”の取材は、2008年夏、秋葉原〜持ってきたところから始まった(267ページ)』、NHKで放映され、大変な反響を巻き起こした「無縁社会」。その取材報道、および放映された映像に対する反響を取材者にフィードバックする過程を著した図書です。

本書の後半では、『若い世代に広がる”無縁死”の恐怖(211ページ)』と、まだ「死」から遠い筈の30代・40代の反響にも触れられています。私も、他人事ではありません。
上で紹介した「秋葉原事件」、その遠因となった対人関係問題にどうしても結びついてしまいます。どうしても「他人に迷惑をかけない」という意識が、いろいろなコミュニケーションの阻害になってしまっています。
「頼って・頼られて」が何故出来なくなっているのでしょうか。やはり「自己責任」という言葉に行き着いてしまいます。池田信夫とか「無縁社会」の議論を意味のないものと断ずる議論もありますが、自己責任の尻を拭うのは行政で、その負担は結局我々に振ってくるから、社会に取ってもこの問題は無視できない。
もちろん、自分も当事者です。18年間「おひとりさま」だったが、確かに誰にも気を遣わないから、大変気楽です。ただ、その快適さには罠がある、そう思いました。

何だか手にした本を振り返ると、「コミュニケーションと他人への関わり」を強く志向している模様です。必要なものが足りていない、足りないままこれから歳を重ねるのはどうも非常にリスクが高そうだ。

(右下)「また会いたい」と思われる人の38のルール」吉原珠央(幻冬舎)

表紙帯の女性の写真に惹かれて『仕事も恋愛も相手から「また会いたい」と思われてこそ目標を達成できるのです(表紙帯)』のタイトルに惹かれて買いました。先に呼んだ本と本の志向はガラリと変わりましたが、方向性はつながりがあるような・・・

本書では、相手に「また会いたい」と思わせるために、外見・考え方・話し方の技術をまとめた本です。結構簡単な事が多いのですが、本書に書いてある事柄を実践使用とすると、人と会う時間はいろいろな事に気を遣い続けなければならず、結構気を使いそうです。
そのようは本書ですが、特に気になったのは『人から「必要とされる」人になろう』(218ページ)の一文。今日これまで読んできた本が、他人との関係が薄いことに因る悲劇についての本が多い中で、「では、どうする?」という一歩進めた問に対する「答え」であるような気がしてなりません。