今週の「週刊東洋経済」〜宴のあとの鉄道特集2015年11月25日 19:49

今週の「週刊東洋経済」〜宴のあとの鉄道特集
今週号の週刊東洋経済。経済誌で時々やる鉄道特集ですが、ここ最近の鉄道ブームが醒めたような、去年までとは異なり今年は批判的というかクリティカルな感じの見出しです。

特集は日本の鉄道産業が抱える問題を「露呈する経営の歪み」「人口減少サバイバル」「狂う目算新幹線の憂鬱」の3点で纏めています。

まず「露呈する経営の歪み」ですが、鉄道網の整備が進み相互直通運転が進む事による遅れの増大などサービスの低下、昨今の鉄道トラブル多発の真相やインバウンド発展により露呈した乗換駅の問題を、極力一般論として多くの人が知見を共有できるように纏められています。
鉄道事業者が、その本業たる運輸業で勝ち取る満足度の総量が減る中で、図書の記述を読んでいて包括的に効きそうな解法として思い出したのが「失敗学」。10年前の死傷者が出なかった中越沖地震に依る新幹線脱線を「大成功事例」と大々的に断じた、評価と切り離して経験から知見を最大限に引き出す手法です。
「石橋を叩き壊す」ことなくイノベーションが廻り、組織毎の「縦割り」を少なくすることが一連の問題の解法だと思いましたが、それに効きそうなのが「失敗学」だと思います。

また、好調なインバウンドに鉄道事業者が追いついていない実情も、「神田のように、観光スポットではないが意外なハブになっている駅は他にもある」(p49)とハブという概念を使って訪日観光客対策に「効く」乗り換え拠点の整備について記述されてぃす、いま開かれている国交省の委員会でも、新線整備よりも乗換駅での案内の重要さが焦点になっていますが、それを補強する内容です。

PART2人口減少サバイバルでは、人口が伸びず運輸事業の収益に限りが見られる中、鉄道事業以外での収益確保策としての沿線開発(高齢化に応じた住み替えや都心部での開発)や、株式公開への見通しについて記述がなされています。
逆に読めば人口がある程度集積する、支店都市のような都市部を対象とした記述が中心で、県庁所在地級の地方部には効かなさそうな感想を持ちました。
また、東京メトロの上場問題では、地下鉄網の統合(東京都)とより高い価値での株式公開(メトロ・国)の立場の違いが明確化されている。副業込みで黒字のJR九州と並び、公的なものを民営化して民鉄のようなビジネスモデルで自立させ、国はうまく回り始めたサイクルを市場に放流して借金返済の原資に充てる「国鉄民営化」スキームが、最後の最後で試されています。

PART3「狂う目算新幹線の憂鬱」は、前半は北海道新幹線函館開業の苦悩(青函トンネル老朽化の改修費用も載る)が綴られています。
後半はみんなそっとページを閉じたくなる新幹線輸出がうまく行かない件。」

「新幹線が高度な技術を有しながら海外で評価されない理由が纏まっています。
引用すると「①日本国内で高評価なことを海外でも同じ物差しで高評価が得られると勘違いしていること②事実を定性的に示すだけで、何故そうなっているかの論理的・定量的説明が不足していること③国際規格(準用される欧州規格)との整合性について、日本規格を使っての説明が困難なこと(p67)」とあり、痛いところを突かれたような気がします。

纏めると、寡黙な職人では駄目で、コミュニケーションに大きな問題がある。これは薄々感じているけど、面として指摘されると事実を認識するだけでも強いストレスを感じます。
弱くても強い力をいなせる柔軟さというか飄々さというか適当さというかダメさというか、広い意味での強さが欲しい。

なんというか、あまり心地よい経験ではなく、いろんなことを考えさせられた特集でした。